印鑑うんちく事典
オンラインストア で商品を検索!

楷書体とは?行書体との違いや印鑑におけるメリット・デメリットを解説

「楷書体ってどんな書体?」
「印鑑の書体に楷書体を選んでもいい?」

楷書体について、このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
このページでは、楷書体の歴史といった基礎知識をはじめ、印鑑に用いるときのメリット・デメリットを解説しています。
楷書体と行書体・明朝体の違いについても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。

楷書体とは

楷書体とは

楷書体(かいしょたい)とは、一画一画を続けずに書いた書体のことで、手書きの基本的な字体として広く使われています。
文字を崩しておらず、整った字体で読みやすいため、履歴書や卒業証書などのフォーマルな書類にも用いられます。
なお、楷書体はその読みやすさから認印やシャチハタにはおすすめの書体ですが、複製が簡単なため実印・銀行印には向いていません。

近年ではデジタル化が進んだことで、多様な楷書体フォントが登場し、パソコンやスマートフォンでも日常的に目にする機会が増えました。
書道においては最初に習う書体として知られていますが、楷書の「楷」には「お手本」「模範」といった意味があります。

なお、「正書(せいしょ)=楷書」とされるため、「正書で書いてください」と指示があった場合は、楷書体を使用するのが一般的です。
「正書」とよく似た言葉に「清書(せいしょ)」がありますが、清書は「きれいに書き直すこと」を意味し、正書とは異なります。

※手書きの書体を「楷書」、印刷書体を「楷書体」と呼ぶ場合もあります。

「楷書」の語源は「楷(かい)の木」?

「楷書」という名前は、中国原産の「楷の木」に由来するといわれています。
楷の木は、枝や葉が整然とまっすぐに伸びるのが特徴で、その姿が端正で整った楷書の字形とよく似ていることから、楷書の語源になったとされています。
一方で、楷書のような整った印象をもつことから、「楷」という名前がこの木に付けられた、つまり楷の木の名前は楷書に由来するという逆の説もあります。

「楷書」と「楷の木」の関係には諸説ありますが、どちらも整然とした美しさを象徴する存在であることに変わりはありません。

楷書体と行書体の違いは?

楷書体と行書体の違いは、「文字が与える印象の硬さ・やわらかさ」にあります。

楷書体は一画一画がしっかりとしており、端正で読みやすい書体です。
整った印象で読み間違いが少なく、礼儀正しい雰囲気のため、ビジネス文書や公的な場面など、誠意を伝えたいときに適しています。

一方、行書体は筆で書いたような流れる線が特徴で、点や線が省略され、字形もやや崩されています。
全体的に曲線的で柔らかな印象があり、文字同士をなめらかにつなげる「連綿線(れんめんせん)」という書き方が用いられるのも特徴です。
書き手の個性やリズムが表れやすいため、行書体は親しみや温かみを伝えたいメッセージなどに向いています。

使い分けとしては、フォーマルな印象を求めるなら楷書体、柔らかさや親しみを演出したい場合は行書体を選ぶとよいでしょう。

楷書体と明朝体の違いは?

楷書体は筆書きを前提とした伝統的な手書きの書体で、明朝体は中国・宋の時代の木版印刷に使われた書体に源流を持つ、印刷向けの書体です。
明朝体の特徴である、線の太さの強弱や「うろこ」と呼ばれる三角形のアクセントは、出版印刷業が発展した明の時代に、効率よく彫れる字形が追求された結果として生まれました。

楷書体は一見すると明朝体と似ていますが、いくつか明確な違いがあります。
たとえば、楷書体は横線にやや傾きがあり、縦横の線の太さがほぼ均一で、「うろこ」も目立ちません。
一方、明朝体は縦線の方が太く、画数の多い漢字でも潰れにくいため、書籍や新聞、教科書などの本文によく使用されます。
WordやExcelでよく使われる「MS明朝」も明朝体の一つで、長文でも目が疲れにくく読みやすいフォントとして親しまれています。

こうした違いから、楷書体は手書きらしい柔らかさや流れを感じさせる書体であり、明朝体は印刷に適したシャープで読みやすい印象の書体といえるでしょう。

楷書体 明朝体
楷書体の文字イメージ 明朝体の文字イメージ

楷書体の歴史

楷書体は隷書体(れいしょたい)の流れをくむ書体として誕生し、南北朝から隋・唐の時代にかけて標準書体となりました。
隷書体から派生した書体には、草書体、行書体、楷書体の3つがありますが、楷書体は一番最後に生まれた書体です。

書体の形から「楷書体が最初にできた」と思われることがありますが、実際には草書体や行書体のほうが先に成立しています。
唐の時代までは、「隷書」「真書」「正書」などと呼ばれ、「楷書」という名称が一般に広まったのは宋代以降です。

唐の第2代皇帝である太宗の時代になると、楷書が洗練されていきますが、これには当時の制度改革が大きく関係しています。
律令制に基づく行政文書の整備や、科挙(官僚登用試験)の導入により、すべての官僚が共通して使える統一的な書体が必要とされました。
その際、太宗が愛好していた書家・王羲之(おうぎし)の書風が手本とされ、楷書の形が整えられていったと考えられています。

こうした歴史的経緯によって、楷書体は実用性と芸術性の両面を備えた書体として発展し、現代でも広く親しまれています。

楷書体の代表的な作品

欧陽詢をはじめ、顔真卿や褚遂良による作品があります。

  • 欧陽詢『九成宮醴泉銘』
  • 顔真卿『顔勤礼碑』
  • 褚遂良『雁塔聖教序』
  • 虞世南『孔子廟堂碑』

シャチハタの書体には楷書体が使われている

宅配便の受け取りや回覧書類への押印など、さまざまな日常シーンで使われるシャチハタは、「誰が押したのか」がスムーズに伝わることが求められます。
そのため、2,960種類の氏名に対応する既製品のシャチハタには、書体のなかでも癖が少なく読みやすい楷書体が採用されています

シャチハタの楷書体

また、名字が珍しいために既製品のシャチハタに取り扱いがない場合でも、別注品で楷書体を指定すれば注文が可能です。
アルバイト先や職場で「シャチハタを持ってきて」と言われ、「どれを買えばいいのか不安…」というときも、楷書体を選んでおけば間違いありません
楷書体は既製品でも使われているシャチハタの定番の書体なので、どんな場面でも安心して使用できます。

ハンコヤドットコムのすべてのネーム印を見る

なお、シャチハタでは、楷書体以外にも行書体・明朝体といった書体も選択可能です。

シャチハタの書体一覧は、下記ページからご覧いただけます。

楷書体は読みやすいため、実印や銀行印には不向き

楷書体は視認性が高く、読みやすいことからシャチハタの既製品でも採用されるなど、一般に広く普及している書体です。
そのため、実印や銀行印などの重要な印鑑に楷書体を使うと、印影が他人と似てしまったり、複製されるリスクが高まるおそれがあります
第三者による悪用リスクの観点から言えば、実印や銀行印では篆書体や吉相体(印相体)といった複雑な書体がおすすめです。

篆書体 吉相体(印相体)
篆書体の印影 吉相体(印相体)の印影

一方で、楷書体は誰が押印したかが判別しやすいため、認印に適した書体です。
なお、ハンコヤドットコムでは印鑑の書体として楷書体は取り扱っていませんが、認印におすすめの書体として、古印体・隷書体をご用意しております。
古印体・隷書体はどちらも読みやすく認印に最適な書体ですので、ご自身の氏名との相性も含めてプレビュー機能も活用しながら検討してみてください。

古印体 隷書体
古印体の印影 隷書体の印影
ハンコヤドットコムのすべての認印を見る

印鑑の書体一覧・詳しい選び方は、下記ページからご覧いただけます。

印鑑におすすめの書体一覧

印鑑におすすめの書体には、吉相体(印相体)や古印体など、いくつか種類があります。
最適な書体は、作りたい印鑑が実印・銀行印・認印などによっても変わるので、見た目も含めて比較検討するのがおすすめです。

吉相体
(印相体)
篆書体 太枠篆書体
吉相体(印相体)の印影 篆書体の印影 太枠篆書体の印影
古印体 隷書体
古印体の印影 隷書体の印影
吉相体
(印相体)
篆書体 古印体
角印の吉相体(印相体)の印影 角印の篆書体の印影 角印の古印体の印影

なお、ハンコヤドットコムでは印鑑における楷書体の取り扱いは行っておりません。

印鑑の書体一覧・詳しい選び方は、下記ページからご覧いただけます。

まとめ

楷書体は、隷書体をもとに成立した歴史のある書体で、漢字の基本形として書道などでも親しまれています。
整ったデザインで読みやすいため、認印・シャチハタといった「誰が押印したか」を明確に伝えたい印鑑におすすめの書体です。
一方で、偽造防止の観点から、実印や銀行印のように高いセキュリティが求められる印鑑には不向きとされます。
実印・銀行印の防犯性を重視する場合は、篆書体や吉相体(印相体)のような複雑な書体を検討するとよいでしょう。

印鑑の書体一覧は、下記ページからご覧いただけます。

ハンコヤドットコムのすべての認印を見る
ハンコヤドットコムのすべてのネーム印を見る